About Oil

油とは

OVERVIEW

複合なる汚染物質

油には植物油・動物油・鉱物油がありますが、土壌・地下水汚染の分野で「油汚染」と言う場合は、主に石油系炭化水素(鉱物油)による汚染を指します。石油系炭化水素はガソリン、灯油、軽油、重油などの石油製品の主成分であり、複数の化学物質が混在する混合物です。揮発しやすい成分は地下水へ移動・溶解し、重質な成分は土壌中に長く残留するなど、環境中で複雑な挙動を示します。また、ベンゼンなどの有害な芳香族炭化水素を含むこともあり、油汚染は健康・環境リスクの面で重要な問題とされています。バイオレメディエーションでは、微生物がこれらの炭化水素を水や二酸化炭素へ分解する働きを利用し、油汚染を低コストかつ環境負荷の少ない方法で浄化できます。
油の分類図:鉱物油(原油・ガソリン・灯油・軽油・重油・潤滑油)、動物油、植物油
BY COUNTRY

規制の比較

これでいいのか!?日本!? G7・OECD加盟国の中で、土壌・地下水中のTPH(石油系炭化水素)・BTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)・PAH(多環芳香族炭化水素)に法的基準を持たない国は、唯一日本だけです。
  • 判断基準が定性的:「臭うか」「油膜が見えるか」など人の感覚に依存
  • 濃度基準なし:「何mg/kg以上で問題」という定量的閾値が存在しない
  • 健康リスク評価の枠組みではない:「生活環境支障」という別概念で処理
  • 発がん性PAHが事実上野放し:ベンゾ(a)ピレン等が「臭わなければOK」扱い
石油精製施設
Country comparison

各国の石油系炭化水素に対する規制対象の比較

海外の主要10か国・地域は、ここに挙げた6項目をいずれも規制対象としています。日本で規制対象となっているのはベンゼンだけです。

各国の石油系炭化水素に対する規制対象の有無
規制対象の物質 海外の主要国・地域EU・アメリカ・カナダ・オーストラリア・中国・韓国・台湾・マレーシア・シンガポール・タイ 日本
TPH規制あり規制なし
B:ベンゼン規制あり規制あり
T:トルエン規制あり規制なし
E:エチルベンゼン規制あり規制なし
X:キシレン規制あり規制なし
PAH規制あり規制なし
COMPOSITION

石油製品の成り立ち

石油の主成分は炭素と水素で構成された炭化水素であり、複数種類の炭化水素が混在する複合物(混合物)です。石油に含まれる炭化水素は、炭素数C1〜C4(常温で気体)からC50以上(低分子〜高分子)まで幅広く存在し、沸点も常温から700℃以上まで多岐にわたります。構成成分は主に脂肪族分芳香族分から成り、これらを製油所で精製・分別・混合することでガソリン、灯油、軽油、重油、潤滑油などの各種石油製品が製造されますが、精製工程が複雑であるため製品ごとに成分が異なります

油は「炭化水素」という分子の集まりです。分子に含まれる炭素の数(炭素数、C)が多いほど沸点は高くなります。炭素数の小さい軽い成分は揮発しやすく、炭素数の大きい重い成分ほど粘りがあり、土や地下水に残りやすくなります。

炭化水素分子の模型
油の種類(炭素数)沸点範囲の目安性質
ガソリン(C4〜C12)約 35〜180°C軽く、揮発しやすい。においが強く、ベンゼンなど(BTEX)を含む
灯油(C8〜C16)約 170〜250°C比較的軽く、揮発しやすい。キシレンを含む
軽油・A重油(C10〜C26)約 240〜350°C中程度。ガソリンや灯油より揮発しにくい(A重油は軽油に残渣分を加えたもの)
C重油(C20〜C44)約 350°C〜重く、粘りが強い。ほとんど揮発せず、土に残りやすい
潤滑油(C28〜C44)約 350°C〜重く、ほとんど揮発しない。土や地下水に残りやすい
ガソリン主にC4~C12の範囲の石油系炭化水素から成り、BTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)を含む。高オクタン価ガソリン(ハイオクガソリン)には、オクタン価を高める目的で、トルエンが24%程度含まれる。
灯油主にC8~C16の範囲の石油系炭化水素から成り、キシレンを含む。
軽油・A重油主にC10~C26の範囲の石油系炭化水素から成り、軽油に残渣を含むものがA重油(軽油約90%、残渣約10%)。税制上の都合から、A重油にはクマリンが添加されている。