コラム
Vol.6油による土壌汚染・地下水汚染浄化
油にはさまざまな種類がある
油と言っても、さまざまな種類があります。例えば、石油類としてストーブに使う灯油や自動車の燃料になるガソリンなどがあります。石油は、石油精製プラントでガソリンや灯油、軽油、重油などに分離されますが、似た油が集まって石油として存在しています。
このように、油は単一の分子構造のものが集まっているのではなく、さまざまな成分の混合物です。油の分子構造は複雑な炭化水素の混合物で、例えばガソリンのように油には名前が付いていますが、ガソリンとして同一の分子構造ではなく、似た分子構造の油が集まってガソリンという名前が付いています。
動物油や植物油も油です。魚の油であれば、EPAやDHAといった2種類の似た成分が多く含まれています。動植物油は、石油系の炭化水素とは構造が異なり、生分解されやすいです。
漏れたときに土壌汚染や地下水汚染として問題になる油は、ガソリンや灯油、軽油、重油、機械油、潤滑油などの「鉱物油」です。
なぜ油汚染がいけないのか?
油の中には、PCBやベンゼン、多環芳香族炭化水素に代表されるような、発がん性物質や有害な物質に指定されているものがあります。
そのように、有害だと認められた油に関しては、日本を含む各国で保存や運搬、廃棄などで細かな規制が行われています。
ところが、油が厳重に保管されていても、漏れ出してしまうことがあり、土壌や地下水が油で汚染されてしまうことがあります。
そのような土壌をそのままにしておくと、後々に人体や環境に悪影響がある可能性があります。例えば、油で汚染された土地が公園になり、子供たちの健康に害が及ぶ可能性があります。
また、地下水汚染の場合には、油が広範囲に広がっていく可能性があります。油に汚染された土壌や地下水は、早急に浄化することが望まれます。
国内と海外の環境基準事情
先ほど、ガソリンを例に似た分子構造の油が集まってガソリンが構成されていることを述べました。世界では、油に含まれる多環芳香族の成分を調べて、それぞれに環境基準を定める傾向があります。
アメリカ、ヨーロッパ、中国、東南アジアの一部の国々など、多くの国では、ベンゼン以外にも、トルエンやキシレン、エチルベンゼンなどの成分に対して、ずらっと基準値が定められています。
ところが、なぜか日本には、世界各国のように細かい基準が設けられていません。そのため、PCBやベンゼンなどの特定の有害だと認められた油以外は、環境規制物質に指定されていません。
日本では、世界各国と比較して、油のさまざまな成分による環境や動植物、人体に対する影響をあまり考慮していないように思えます。異臭があったり油膜が見えたりして普段とは異なるものがあること、不快感や違和感があるために除去しようと考える傾向があります。
そのことから、日本国内での土壌汚染浄化や地下水汚染浄化は、次のような理由で行われることが多いです。
日本国内でよくある油の汚染浄化の実例
主に次のような場合に油の浄化が行われます。
- 借地や隣地を油で汚してしまった
- 公共施設での油漏れ
- 自社で設定する油の基準を超えたので浄化する
- 事業撤退後に社会的責任から浄化する
- 土地の売却をしようとしたが油汚染が判明した
日本国内でよくある油汚染浄化の実例には、次のようなものがあります。
ガソリンスタンド | ベンゼン、ガソリン、灯油、軽油など |
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工場 | ボイラー用の重油、部品の切削油、機械の潤滑油など |
学校 | 暖房用の灯油や重油 |
病院 | 暖房・給湯用の灯油や重油、自家発電機用の重油 |
土壌汚染と地下水汚染
土壌汚染は、土壌の中に油がしみ込んだ汚染です。地下水汚染は、油が地下水のところまでしみ込んだ汚染です。国内では、どのような土地でもたいてい地下水があります。土地の地下水の深さと油のしみ込み度合で、土壌汚染だけか、それとも地下水汚染にまで到達するのかが異なります。
土壌汚染では、主に汚染された土壌を別の場所に運んで浄化する方法と、その場所で浄化する方法の2種類あります。その場所で浄化する方法を、原位置浄化といいます。
地下水汚染では、基本的に油は水よりも軽いので、地下水面に到達したら横に広がり、広域に汚染される可能性があります。また、地下水は季節によって上下するので、上下の帯状に汚染されます。
地下水汚染浄化では、主に原位置浄化が行われます。
地下水の中に油が溶け込むことは少ないので、もし、地下水面に油が大量に溜まっている場合は、その油を物理的に回収することが有効です。
酸化剤とバイオレメディエーションの比較
油汚染された土壌や地下水を浄化する方法は、さまざまあります。汚染された土壌を掘り返す方法や、浄化剤を地中に注入する方法などです。それぞれの方法にメリットとデメリットがあります。
浄化剤を土地にまいたり地中に注入したりして浄化する方法として、酸化剤を用いる方法とバイオレメディエーションがあります。それらのメリットとデメリットを比較いたします。
酸化剤での油浄化
油浄化には、酸化剤をまく化学的な方法がありますが、池や川、海などで水生生物がいるところでは使用しにくいです。また、土地が酸性になってしまうので畑の油浄化にも使用が制限されます。また、酸化剤によって金属が腐食するために、金属製の建物や構造物に影響がある可能性があります。
また、酸化剤は一瞬の反応です。つまり、酸化剤と油が接触したら浄化ができますが、その一瞬だけです。もし、酸化剤が足りない場合には、追加で酸化剤を投入していく必要があります。
酸化剤は油以外の有機物にも反応するので、有機物が多い土壌では、浄化したい油だけに反応してくれないため、酸化剤の使用量が増えてしまいます。
バイオレメディエーションでの油浄化
バイオレメディエーションは、微生物の力で油を浄化する方法です。微生物の状態によって油の浄化速度が異なってくるため、油の浄化期間が読みにくいというデメリットがあるものの、環境に影響がありませんし、建物のある土地でも浄化が可能というメリットもあります。油汚染された土地に微生物が入った浄化剤をまいたり、注入したりして土壌と攪拌させることで油浄化ができます。
バイオレメディエーションによる浄化のメリットは、環境負荷が低いことだけでなく、微生物が生きていることもあります。つまり、酸化剤とは異なり、微生物が生きている限りは、その土地の油を継続的に浄化してくれます。
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