事例
田んぼを汚染した廃油を微生物の力で分解
田んぼに廃油が流出する事故が発生
1994年、とある産廃業者が、産廃を保管する倉庫を拡張するために工事を行っていました。ところが、その産廃業者は、誤って廃油を漏らしてしまいました。流れ出た廃油は、隣の田んぼに流れ込み、付近の稲はすべて枯れてしまいました。 産廃業者の社長は、すぐさま田んぼの持ち主に「できる限りの保証と原状回復をしたい」ということで、廃油で汚染された田んぼでその年と翌年に収穫されるはずの米をすべて買い取ることにし、また、田んぼの浄化を行うことになりました。 写真は、枯れた稲を刈り取っている様子です。田んぼの土が黒く変色しているのは、流れ込んだ廃油によるものです。左側に見えるコンクリート壁の上から、廃油が漏れ出しました。
産廃業者の社長からの電話
田んぼの廃油の浄化のご相談は、産廃業者の社長から直接お電話をいただきました。その社長は、知り合いを通じて、環境にやさしく油を浄化できる方法として、バイオレメディエーションの存在を知ったといいます。その当時産廃業者の社長は環境問題への取り組みも考えておられ、「バイオレメディエーションはこれから必要な技術だ」と思われたそうです。 まだ世間ではバイオレメディエーションの存在があまり知られていなかったため、本当に浄化ができるのか、本当に環境にやさしいのか、不安もあったそうです。 産廃業者の社長としては、「浄化ができるに越したことはない」「新しい手法であるが、今年と来年の米は自分が買い取ることになっているので、チャレンジしてみよう」ということでした。 油流出事故現場の状況を電話で確認し、すぐさまバイオ製剤を自動車に詰め込んで、現地に駆け付けました。 しかし当時は、バイオレメディエーション事業を開始したばかりで、さまざまな油が混ざっている廃油を本当に浄化できるのかどうかは、「やってみなければ判らない」というのが本音でした。しかし、産廃業者の社長にも納得をいただき、「失敗したら土を掘り返して移動させればよい。試験的にバイオレメディエーションをしてみよう。」ということで、浄化を行うことになりました。
バイオレメディエーションの作業開始
枯れた稲を刈り取った後、バイオ製剤を手で撒布している様子です。 写真の左下側の地面には、漏れた廃油の後があります。 バイオ製剤は、手で直接撒布しても問題のない、環境にも生物にもやさしいものです。
有害な廃油は、田んぼの表面だけに存在するわけではありません。土壌の中にも浸透していきます。そこで、バイオ製剤を撒布した後は、土壌を掘り返し、土壌とバイオ製剤をよく撹拌します。 そうすることで、微生物と廃油が接触しやすくなります。攪拌が終わったら、そこに水を撒きます。微生物は、水がないと活動しません。 このバイオ製剤の撒布・攪拌・水まきの作業を、1週間後にもう1回行いました。
バイオレメディエーションの浄化効果
さて、バイオ製剤を撒布した後、土壌の色は元の色に戻り、雑草が生えてきました。もし、廃油が土壌に残ったままであれば、稲も雑草も生えてきません。 産廃業者の社長には、廃油浄化ができた様子をご覧になられ、喜んでいただきました。 バイオレメディエーションによる廃油の浄化は、新聞にも掲載されました。まだバイオレメディエーション事業を開始したばかりでしたので、その後の自信にもつながりました。